内科 – スギ花粉症の免疫療法「シダキュア」

内科 – スギ花粉症の免疫療法「シダキュア」

スギ花粉症とは

スギ花粉症は多くの人々が悩むアレルギー疾患の一つです。また、日本人の間で最も一般的なアレルギー性鼻炎の一つで、スギの花粉が原因となって発症します。地域差はありますが、スギの花粉は例年2月から4月にかけて多く飛散し、この時期にはくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こす人が増えます。これらの症状は、スギ花粉が体内に侵入した際に、体が過剰な免疫反応を起こす結果として生じるものです。
実はこれまでの治療方法には、花粉症の症状を取り去るものはなく、症状を和らげる薬物療法が主流でした。そんな中、アレルギー体質自体を改善する可能性を持つ新たな治療法が提唱されています。それが舌下免疫療法「シダキュア」です。

スギ花粉症の舌下免疫療法「シダキュア」とは

舌下免疫療法とは、アレルギー反応を引き起こす原因物質(アレルゲン)を少量ずつ体内に取り込むことで、体がその物質に慣れるように調整し、アレルギー反応を抑える治療法です。具体的には、スギ花粉を原料とした舌下錠「シダキュア」を舌の下に置き、溶かして服用します。
この治療法の特徴は、アレルギーの根本原因に働きかける点です。従来の花粉症薬が症状を一時的に抑えるのに対し、舌下免疫療法は体質そのものを改善しようとする取り組みです。長期的に見れば、薬物療法に頼る頻度を減らせる可能性があると考えられています。

スギ花粉症になりやすい人とは

スギ花粉症は、体質や生活環境だけでなく、体調やストレスなども影響すると考えられています。
スギ花粉症になりやすい人は、遺伝的な傾向がある人や、特定の環境要因にさらされている人です。一般的に、親や兄弟が花粉症である場合、自身も花粉症になりやすいとされています。
また、生活環境も大きく影響します。例えば、都市部での生活や、乾燥した室内での長時間過ごすことなどが挙げられます。

舌下免疫療法「シダキュア」の効果

舌下免疫療法の効果は個々人で異なります。すぐに効果が表れるわけではなく、初回服用から数ヶ月後に何らかの改善が実感できる場合や、2~3年後に効果が表れる場合もあります。目安として、効果を実感できるようになるまで、治療を始めてから最低2年は必要と言われています。
また、舌下免疫療法の効果は約8割の方に表れ、1、2割の方は効果が実感できないとも言われており、やはり効果には個人差があるようです。また、一般的に1年目より2年目、2年目より3年目の効果が大きいとされており、継続的な治療が重要とされています。

舌下免疫療法「シダキュア」と他の花粉症薬との併用

舌下免疫療法と他の花粉症薬との併用は可能です。つまり、舌下免疫療法を始めたからといって、すぐに他の花粉症薬をやめる必要はありません。むしろ、他の薬の量を少なくすることが一つの目的であり、症状に応じて適切な薬を併用することが一般的です。

「シダキュア」と他の花粉症治療法の違い

舌下免疫療法と他の花粉症治療法との最大の違いは、舌下免疫療法が「体質改善」を目指すことです。一方、従来の花粉症治療法は主に症状の緩和を目指しています。これらの治療法にはそれぞれ利点と欠点があります。
例えば、対症療法は効果が速やかに表れる場合が多く見られますが、薬を常に服用しなければならないという欠点があります。一方、舌下免疫療法は効果が出るまでに時間がかかるものの、治療後の効果が継続する可能性があるという利点があります。
「シダキュア」とその他の花粉症治療法を比較した表を以下に示します。

シダキュア(舌下免疫療法)

概要
スギ花粉を微量摂取し、体質改善を目指す
効果が実感できるまでの期間(目安)
数ヶ月〜数年
長期的効果
3〜5年の治療後、一部の患者には治療を中断しても効果が持続
注意点
スギアレルギー以外のアレルギーには効果が期待できない

抗ヒスタミン薬

概要
ヒスタミンの作用を阻害し、アレルギー反応を抑える
効果が実感できるまでの期間(目安)
2週間程度
長期的効果
服用をやめると効果がなくなる
注意点
長期使用により耐性が出る場合がある。眠気を引き起こす可能性がある

ステロイド剤(点鼻薬)

概要
鼻の粘膜の炎症を抑える
効果が実感できるまでの期間(目安)
2週間程度
長期的効果
服用をやめると効果がなくなる
注意点
長期使用により鼻粘膜の萎縮を引き起こす場合がある

※効果が実感出来るまでの期間やその効き目には個人差があります。医師と相談しながら治療方法を検討してください。

スギ花粉以外のアレルギー性鼻炎と舌下免疫療法

舌下免疫療法はスギ花粉症とダニアレルギーに対してのみ、日本で承認されています。ただし、スギとダニの舌下免疫療法を同時に開始することはできません。副作用が出た場合、どちらの薬が原因か判断ができないためです。治療開始日を1ヶ月間以上空けるようにしましょう。

このような方は舌下免疫療法「シダキュア」をご検討ください

舌下免疫療法による治療は、以下のような方にご検討いただいています。

  • 花粉症の症状を改善し、内服薬や点鼻薬を減らしたい方
  • 花粉症の症状や薬の副作用(眠気など)で、日常生活(仕事、家事、学業など)に支障をきたす方
  • 花粉の飛散時期のつらい症状と長期間向き合うことに不安を感じている方
  • 今後の受験がスギ花粉飛散期と重なる予定で、早めに対策をとりたい方
  • 現段階では妊娠の予定はないものの、将来的に薬が飲めなくなった場合の不安を解消したい方

このように、舌下免疫療法「シダキュア」は、スギ花粉症の長期的・根本的な改善を望まれる患者さまに適した治療法と言えます。

舌下免疫療法「シダキュア」を受けられない場合とは

一部の病状を持つ方や、特定の薬を服用している方は、舌下免疫療法を受けることができないか、あるいは、注意が必要な場合があります。以下はその主な例です。

  • 自己免疫疾患を持っている方
  • 喘息の症状が安定していない方
  • 他にお薬を服用中の方(非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬人など)
  • 5歳未満、あるいは65歳以上の方
  • 妊婦・授乳婦の方

上記に該当する方は、舌下免疫療法を開始する前に必ず医師と十分に相談してから検査を検討してください。

舌下免疫療法「シダキュア」の治療後の注意事項

舌下免疫療法は、自宅での治療が可能な一方、一部の患者さまに副作用が出る場合があります。多くは軽度で、口内のかゆみや腫れ、胃腸の不調などですが、稀に重篤なアレルギー反応を起こすこともあります。したがって、自宅での服用開始は、医師の指導のもとで行うことが推奨されます。
また、スギ花粉症の治療を行いながら、他のアレルギーの薬を併用することも可能ですが、薬の量や種類については医師とよく相談することが重要です。

「シダキュア」の服用方法

シダキュアの服用は、患者さまご自身で行うことが可能です。まず、医師の指導のもとで初回の服用を行い、その後は自宅で日常的に服用します。特に、花粉飛散期に入る前に治療を開始し、飛散期を通じて継続することが推奨されます。ただし、副作用が出た場合や体調に異変を感じた場合はすぐに医師に相談してください。

舌下免疫療法「シダキュア」に関するよくある質問

「シダキュア」に副作用はありますか?
シダキュアの一般的な副作用には、舌や口の中のかゆみ、腫れ、不快感などがあります。これらは通常、薬を舌下に置いてすぐに現れ、数分で消えることが多いです。しかし、重度の副作用が現れたり、持続したりする場合は、すぐに医師に相談してください。
「シダキュア」の最適な治療開始時期はいつですか?
シダキュアの治療を始める最適な時期は、スギ花粉の飛散が終わった後、つまり晩春から初夏にかけてとされています。治療を開始してから免疫反応が安定するまでには数か月を要するため、スギ花粉の飛散期前に治療を始めるとよいでしょう。
タイトルとURLをコピーしました