内科 – 糖尿病

内科 – 糖尿病

糖尿病とは

糖尿病は、身近な生活習慣病でありながら、全世界で5億人以上に影響を及ぼす大きな公衆衛生上の健康問題となっています。
糖尿病とは、体内の血糖値(血液中の糖分濃度)が正常値を超えて高まる状態を指します。血糖値は通常、インスリンというホルモンの働きによって一定に保たれていますが、このインスリンの働きが不足したり、うまく機能しなくなると血糖値が高くなります。

糖尿病の症状

糖尿病は初期症状がない場合が多く、日常生活に影響が出るまでには時間がかかることが少なくありません。しかし、以下のような症状が現れた場合は、糖尿病が原因となっている可能性があります。

  • 常に喉が渇く、頻繁に水を飲む
  • 尿の回数が増える
  • 体重が減る
  • 疲れやすくなる
  • 足にしびれやむくみが起こる

糖尿病の診断は健診や検査結果により確定される場合が多く、特定の症状が現れたからといって必ずしも糖尿病であるとは限りません。しかし、血糖値が極端に高くなると意識障害を起こす場合もあるため、気になる症状がある場合は、早めに医師へ相談しましょう。

糖尿病の種類と特徴・原因

糖尿病にはいくつかの種類が存在します。主に以下の4つに分けられます。

1型糖尿病

1型糖尿病は、インスリンを作っているβ細胞が破壊され、すい臓からインスリンがほとんど分泌されない状態を指します。この原因は、何らかの免疫異常により自分の細胞を攻撃する抗体ができてしまう、いわゆる「自己抗体」だと言われていますが、定かではありません。
インスリンが分泌されなくなると、血糖値の上昇を抑えられなくなるので、生存のためには外部からインスリンを補給する必要があります。これをインスリン依存状態とも呼びます。

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリンの分泌が低下したり、体内でのインスリンの働きが悪くなったりすることにより血糖値が高くなる病態を指します。日本の糖尿病患者のほとんどが、この2型糖尿病と言われています。
その原因には人種的要因もあることが判明しています。アジア系の人種は他の人種と比べてインスリンの分泌が少ないため、日本人や中国人などは、肥満でなくても2型糖尿病を発症する可能性が高いとされています。
2型糖尿病の発症は、インスリンの作用の低下が原因です。そして、高カロリー食品の食べ過ぎ・運動不足といった生活習慣の乱れが重なることで、発症のリスクはさらに高まります。したがって、生活習慣を改善できれば、ある程度発症のリスクを抑制できます。
2型糖尿病にかかりやすい人の特徴には、一定の傾向が見られます。それは、40歳以上・肥満・家族に糖尿病患者がいる、そして運動不足です。加えて、高血圧や脂質異常症を抱える方も、2型糖尿病になりやすいことが認識されています。

以下に、1型糖尿病と2型糖尿病の特徴を比較した表を示します。

 
1型糖尿病
2型糖尿病
発症年齢
主に幼少期~若年期
中年期~更年期
近年も若年者にも増えている
原因
自己免疫反応によりすい臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる
生活習慣(食事・運動不足・肥満等)と遺伝的素因により、インスリン抵抗性が生じ、またはすい臓のインスリン分泌能力が低下する
症状
急激な体重減少、口渇、多尿、疲労感など
徐々に体重増加、口渇、多尿、疲労感など。
しばしば無症状であることも
治療
インスリン治療が必須
生活習慣改善(食事療法、運動療法)が第一。
必要に応じて経口抗糖尿病薬やインスリン治療
合併症
眼科的、腎臓的、神経的合併症、動脈硬化性疾患
眼科的、腎臓的、神経的合併症、動脈硬化性疾患

その他の特定の機序、疾患によるもの

糖尿病は、特定の疾患や薬物療法などが原因で血糖値が上昇し、発症する場合があります。その要因は大きく2つのカテゴリーに分類され、1つは遺伝子異常によるもの、もう1つは他の疾患や条件にともなうものです。
遺伝子異常によるものは、遺伝因子として遺伝子異常が固定されたもので、膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常や、インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常が含まれます。遺伝子研究の進歩により、糖尿病の発病に直接つながる遺伝子の異常がいくつか確認されています。
一方、他の疾患や条件にともなうものは、二次性糖尿病とも呼ばれています。具体的には、膵炎やクッシング症候群、先端肥大症、グルカゴノーマ、甲状腺機能亢進症、ダウン症候群などの疾患、またはステロイド剤や利尿薬など血糖値に影響を及ぼす薬の長期使用、あるいはすい臓がんですい臓を摘出した場合などが該当します。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて指摘される糖代謝異常で、糖尿病の診断基準には達しない状態を指します。これは妊娠前に糖尿病の診断を受けていない女性にしばしば見られる疾患です。具体的には、糖負荷試験の結果に基づいて診断されます。遺伝的な要素や生活習慣が影響し、糖尿病の家族歴がある場合や過食、肥満、運動不足の習慣があると、発症リスクが高まります。日本では妊婦の約12%が妊娠糖尿病と言われており、晩婚化・晩産化の影響もありその傾向は増加しています。

糖尿病の合併症

長期的に血糖値が高いままだと、様々な身体の部位に合併症が生じるリスクが高まります。目、心臓、腎臓、神経、足など、多岐にわたる箇所に影響を及ぼす可能性があります。
特に、以下のような合併症が知られています。

  • 視力低下や失明(網膜症)
  • 心筋梗塞や脳卒中(動脈硬化症)
  • 腎臓病(糖尿病性腎症)
  • 神経障害(糖尿病性神経症)
  • 足の傷が治りにくい、最悪の場合は切断が必要になる(足の合併症)

しかし、適切な生活習慣の管理と医療の受診によって、これらの合併症のリスクは大幅に下げることが可能です。

糖尿病の予防と生活習慣の見直し

糖尿病の予防は、日々の生活習慣の見直しとともに、医療専門家との継続的な協力が必要です。食事療法、適度な運動、必要に応じて薬物療法やインスリン療法、そして定期的な血糖値の測定と医療機関での健康チェックが重要となります。

食事療法
血糖値のコントロールには、食事の内容とタイミングが大切です。バランスの良い食事、特に繊維質が豊富な食品の摂取や、過剰な糖分や脂質の摂取の制限が有効とされています。
適度な運動
適度な運動は、血糖値を下げるだけでなく、体重の管理や心血管系の健康にも寄与します。医療専門家と一緒に、自分に合った運動プログラムを作成することが推奨されます。
薬物療法とインスリン療法
糖尿病の種類や個々の病状によって、薬物療法やインスリン療法が必要になる場合があります。薬物療法には、インスリンの分泌を促す薬やインスリンの働きを助ける薬などがあります。1型糖尿病や一部の2型糖尿病の患者さまでは、インスリン療法が必要となる場合が多いです。
定期的な血糖値の測定と医療機関での健康チェック
自己管理として、自宅での血糖値の測定が推奨されます。また、定期的に医療機関での健康診断を受けることで、病状の変化を早期に把握し、適切な治療を受けることが可能です。

糖尿病と生活の質(QOL)

糖尿病の治療には、生活習慣の改善が前提とされています。しかし一方で、糖尿病患者の食事制限が、患者の生活の質(QOL = Quality of Life)にどのように影響するか、という課題についても関心が高まっています。食事は、多くの方にとってQOLに影響を与える大切な要素です。そのため、食事による健康管理と精神面での健康管理を両立する工夫が求められています。
具体的には、闇雲に脂質の多い食材を抜いた食事を用意するのではなく、「野菜から食べ始める」「夕食の時間を早くする」「主食と主菜・副菜をバランスよく摂る」といった工夫が挙げられます。QOLを維持しながら、糖尿病改善に向け、生活習慣を見直していくことが大切です。

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