内科 – 副鼻腔炎

内科 – 副鼻腔炎

副鼻腔炎とは

副鼻腔炎とは、副鼻腔をおおっている粘膜が何らかの原因で炎症を起こしている病気のことです。風邪による鼻炎症状とよく似ているため、発症に気付かないケースも少なくありません。副鼻腔炎は、別名「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれています。子どもから高齢者まで幅広い年代に発生し、治りにくいものもあります。
副鼻腔は、鼻の周辺にある空洞のことであり、鼻腔と細い管でつながっています。左右にそれぞれ4対、合計8個あり、その中には空気が入っていて小さな穴で鼻腔とつながっています。副鼻腔から鼻水などの分泌物や異物は、この道を通って副鼻腔の外に出ていきます。
副鼻腔炎は日本人が最も多くかかる病気の1つです。風邪(ウィルスや細菌感染)やアレルギーなどがきっかけで鼻の中に炎症が起こると、鼻の粘膜が腫れたり、ドロドロした鼻水が出てきたりします。この粘膜の腫れや鼻水は副鼻腔と鼻の間にある通り道をふさいでしまいます。外に出るべき副鼻腔の分泌物や異物が排泄でき溜まってしまい、副鼻腔炎を引き起こすのです。

副鼻腔炎の種類

副鼻腔炎には「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」とがあります。

急性副鼻腔炎
副鼻腔炎のうち、30日未満で完全に消失するものを急性副鼻腔炎とされています。急性副鼻腔炎は、主にウィルスや細菌が原因で起こり、症状は30日ほどで軽快していきます。自然に治ることもあり、抗生物質などの投与で比較的簡単に治るのが特徴です。
元々アレルギー性鼻炎の方が風邪をひくと、急性副鼻腔炎になってしまうことは少なくありません。
慢性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎が長引いたり繰り返されたりし90日以上治らない場合は慢性副鼻炎と診断します。近年、慢性副鼻腔炎の中でも、治りにくいタイプ(難治性)の慢性副鼻腔炎も増加傾向です。
患者の家族に同じ病歴があることも多く、遺伝的素因も要因の1つと考えられています。慢性副鼻腔炎が重症化すると、集中力の低下や不眠などを招いて生活の質が著しく損なわれます。また、炎症が副鼻腔だけでなく目や脳にも及ぶ恐れがあるため、早めに受診してください。

副鼻腔炎の主な症状

急性副鼻腔炎主と慢性副鼻腔炎は、似た症状を引き起こします。
具体的には以下のものがあります。

  • 鼻づまり
  • 鼻から黄色や緑色の膿(うみ)が出る
  • 鼻水がのどに落ちる
  • 顔面の圧迫や痛み
  • 痰(たん)をともなう咳(せき)
  • 嗅覚の減退
  • 口臭
  • 頭痛
  • けん怠感

発熱や悪寒(おかん)も起こるケースがあります。感染が副鼻腔にとどまらず、さらに広がっている可能性もあるため、すぐに受診してください。

副鼻腔炎の主な原因

副鼻腔炎の原因で一番多いのは、風邪です。風邪の原因菌は、一般的にインフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルスです。体力が低下している場合は別の細菌のインフルエンザ菌や肺炎球菌の感染が原因の場合もあります。
副鼻腔炎が長引くと本来、膿(うみ)を排出する能力をもった粘膜が機能しなくなり、粘膜そのものが腫れ上がり、さらに炎症が悪化することがあります。
アレルギーやぜん息、ハウスダストなども副鼻腔炎を悪化させるため、注意が必要です。
また、免疫の働きが低下している方や鼻中隔弯曲症(鼻中隔が著しく曲がっている)の方は慢性副鼻腔炎を発症しやすくなります。
上の歯が虫歯の方や、炎症を起こしている方も副鼻腔炎を引き起こしやすいです。大気汚染なども副鼻腔炎の原因になります。

副鼻腔炎の診察・検査方法

副鼻腔炎の疑いがある場合は、医師による症状の聞き取りや、必要に応じて以下のような検査を行い、診断を行います。

問診
いつ頃から、どんなきっかけで、どのような症状があるのか、などの自覚症状をお聞きします。
鼻の中の検査
鼻鏡や内視鏡で鼻内部や副鼻腔を観察をします。
炎症具合や副鼻腔からの膿(うみ)の流出、鼻茸(ポリープ)があるかなどを確認します。
嗅覚検査
症状によっては、嗅覚検査をします。
どの程度臭いがわからなくなっているかを調べます。
画像検査
CTやレントゲンで画像検査をします。
抗菌薬による治療を開始し、約2週間様子をみても改善がみられない場合は、CTやレントゲンを使って程度や範囲を確かめます。
サンプルを採取し検査
副鼻腔の液体のサンプルを採取し検査することもあります。
サンプルを採取する際に、処置を行う部位の感覚をなくすための局所麻酔が必要ですが、診察室で行うことが可能です。

副鼻腔炎の治療方法

急性副鼻腔炎の治療で抗菌薬を服用した場合、通常2週間程度で完治します。それでも治らず症状が90日以上続く場合に慢性副鼻腔炎と診断します。
副鼻腔炎をきちんと治すためには、治療の継続が必要な場合があります。患者さんの症状に合わせ、直接鼻に処置を行う「局所療法」と薬の内服の「薬物療法」を組み合わせて治療します。慢性副鼻腔炎の場合、治療期間は数ヶ月かかりますが、根気よく治療することが大切です。

局所療法

鼻汁吸引
粘り気のある鼻水や膿(うみ)を吸引して、鼻の通りをよくします。
ネブライザー療法
鼻汁吸引を行った後、鼻の穴にノズルを差し込みます。霧状のステロイドや抗生物質を鼻粘膜に直接届けます。

薬物療法

去痰剤(きょたんざい)
粘りのある鼻水をさらさらにして、鼻水やたんをでやすくします。
消炎酵素薬
粘膜の炎症を抑え、粘性の分泌物やたんを溶かして排出しやすくします。
解熱鎮痛剤
発熱や顔の痛みなどを抑えます。
抗アレルギー薬
アレルギー性鼻炎を併発しているとき、症状を抑えるために処方します。
抗生物質(※)
急性期では細菌増殖を抑え、慢性期では炎症に関係する免疫や細胞機能を抑えて、鼻粘膜の炎症状態を改善します。

※細菌の増殖を抑えるマイクロライド系の抗生物質を、急性期には通常の薬剤量を1〜2週間短期投与します。慢性期には通常使用の半分の薬剤量を2〜3ヶ月長期投与します。長期の薬剤投与で不安を感じる患者さんもいらっしゃいますが、副作用は少ないため安心してください。医師が処方した期間と回数を守ることが大切です。

手術

まれに投薬で改善しない場合には、内視鏡をつかった手術を行います。炎症を起こしている粘膜や鼻茸( 鼻ポリープ) を取り除くとともに、鼻と副鼻腔をつなぐ穴を広げて、炎症が起こりにくい状態にします。詰まっている穴を広げて、中の膿を吸い出す処置も行います。手術を受ければ、ほとんどの場合、再発することはありません。
副鼻腔に溜まった鼻水はできるだけ鼻をかんで出し切ってください。小さな子供は自分で鼻をかめない場合もあります。鼻の奥に溜まった鼻水を吸引するとスッキリして不快感が軽減されるため、鼻水の吸引だけでも通院をおすすめします。

早めの受診を

風邪の症状が長引いていると思ったときには、特に注意が必要です。副鼻腔炎が起こっている可能性があります。くしゃみや発熱は治まったのに、鼻づまりや鼻水がのどに落ちる、などの症状が続いている場合は、早めに来院し医師にご相談ください。
急性副鼻腔炎のうちに受診し、治療をすることで慢性副鼻腔炎への進行を防げます。症状が比較的軽い段階で薬物治療を行えば、副鼻腔炎は完治しやすいです。副鼻腔炎が悪化すると、中耳炎を発症するリスクもあります。また、重症化して髄膜炎(※)を引き起こすケースもあるため、放置しないようにしましょう。

※髄膜炎とは、頭蓋骨と脳の間にある「髄膜」という膜に、細菌・ウイルスなどが感染し、炎症を起こす病気です。頭痛や嘔吐、錯乱などの症状が現われ、命に関わることもあります。

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